LOGIN「とりあえず、黙って聞け!
あの時、いったい何が起きていたのか。 ことの真相をお前に聞かせてあげるからのぅ」取り押さえたゼドを前にゾルダは先々代魔王、ゾルダやゼドの父の死について語り始めた。
「ゼド、お前が勘違いしているところがいくつかあるのじゃ。
その1つとして、この魔族の国の成り立ちについてじゃ。 お前はこの国が何故出来たのか知っておるのか?」「それは……人族を根絶やしにするため……
この大陸を魔族が支配するためだろ!」身体は屈しているものの、顔を上げゾルダを睨んでいるゼドはそう吐き捨てた。
「そこからじゃ。
このたわけが」ん?
魔王はこの大陸の支配が目的じゃない? 俺も王からは魔王が攻めてきているからとは聞いているのだが……「そもそもこの国は迫害から逃れるために、初代勇者がその者たちと立ち上げた国じゃ」
なんだと?
衝撃の事実…… この国に初代勇者が絡んでいた?「勇者だと?」
ゼドも驚愕の事実に絶句する。
「そうじゃ。
数千年前のことじゃ。 ワシも父上からこのことを聞いておるし、この国の中枢に代々言い伝えられていることじゃ。 当時、邪悪なるものの存在を倒すべく、勇者召喚が行われたのじゃ。 その勇者がその邪悪なるものも打ち倒した…… そこまではいいかのぅ」「そうだな、その邪悪なるものが余たちの祖先のはず……」
明らかにうろたえ始めたゼド。
ヒルダやセバスチャンは顔を変えずにゾルダの話を聞いている。 この二人は真相を知っているのだろう。「そうですわね、マリーもそう聞いておりますわ」
マリーはどうやら知らないようだ。
ゼドと同様に落ち着かない様子だった。 その様子をちらっと見るもゾルダはそのまま話を続けた。「まぁ、そこからが問題なのじゃが……
その邪悪なるものが、魔族と定義されてのぅ。 当然「そう言えば、アスビモの居場所つかめていないのに、どこに行くんだ」せっかくアスビモの奴を倒そうとやる気が満ちておるところじゃったのに…… あやつは興醒めする発言をするのぅ。「そんなものどうにでもなるじゃろ。 第一、今までも居場所を掴めておらんのじゃ。 そう簡単に見つかる訳がないじゃろぅ」こうなったら、この国を隈なく探す他ないじゃろ。 どこかにはアスビモの奴の居場所を知るものが必ずおるしのぅ。「それでも闇雲にって訳にはいかないだろう。 この広い大陸をどうやって探していくのさ」あやつの言いたいことは分からんでもないのだが……「まぁ、それはとりあえずじゃな…… シータの転移魔法で行けるところに行ってじゃな」ワシがシータの名前をだすとシータは驚いた様子で、自分を指したのじゃ。「えっ、おいどんですか? ゾルダ様が言うのであればやりますが、それでも限界はありますの」顔が曇ったように見えたのじゃが、お前ならやれるじゃろ。「お嬢様、さすがにそれは厳しいかと……」セバスチャンまで反対するのかのぅ…… そこまで大変ではないと思うのじゃが…… あっ、そうだ!「シータが出来なくなったら、ワシがやる!」これならどうじゃ。 ワシが転移魔法使えばさらに行ける場所も増えるじゃろ。 自慢げにそう言ったのじゃが……「それだけは勘弁してくれの」「それだけは止めてくれ」「それだけは自重していただきたく」あやつ、シータ、セバスチャンが同時に止めに入ってきたのじゃ。 そんなにワシの転移魔法は当てにならんのかのぅ。「ふふふふふ…… そんなにゾルダちゃんをいじめなくても……」姉貴がワシのことを庇ってくれるのは嬉しいのぅ。「姉貴……」「もう、ゾルダちゃんばかりズルいわ。 わっちにもっと言葉責めを……」姉貴は顔を赤らめて、悶えておる。 ワシは姉貴を尊敬はしておるが、このところだけはどうにも理解できんのぅ。 とりあえず、放っておくかのぅ。「ローラー作戦も最終手段としては考えるとして…… そう言えば、ゼドは知らないの? アスビモの居場所」あやつは、うなだれるゼドに問いかけておる。「…… 余も詳しくは知らないが……」ゼドの奴、まだその一人称使うのか。 何かまだ話そうとしておるようじゃが、ワシの気持ちが収まらん。「
「そうじゃ、その通りじゃ。 まぁ、当時は分からなかったがのぅ。 ここに来て、お前を見て確信したわ」ゾルダはニヤリと笑った。 この話ぶりだと、ゾルダの父の死の真相とアスビモは関係していそうだ。「あいつ、余を……」苦虫を噛み潰したような顔をしているゼド。 今まで自分自身で積み上げていたと感じていたことが、そうではなかったのがわかったのだろう。 アスビモにも自分にも憎しみが湧いてきたのを感じているようだ。 そう思うと俺もやりきれなさを感じる。「じゃが、騙されたおぬしも悪いのじゃ!」ゾルダは鬼の形相でゼドを一喝する。 ゼドも落ち込んでいるだろうに…… 傷口に塩を塗り込むが如くの言い方だ。「ゾルダ、そんなにきつく言わなくても……」ゼドもゾルダの一言でより絶望に落ちたような顔をしている。「いいのじゃ。 もともとこうなったのもゼドが悪いのじゃからのぅ」ゾルダも容赦しないというかなんというか……「何もそう言わなくても……」俺はゾルダに窘めるように言うと、思い直したのかゾルダは少し咳払いをして言い直す。「…… まぁ、そうじゃな。 ゼドよりか悪い奴がおるしのぅ……」ゼドに向かった顔は少し優しさを感じる顔だった。「ところで先々代魔王、お前の父さんはどうアスビモの奴に……」「そうそう、その話じゃったな。 あの時何が起きたかと言うとじゃのぅ……」そう言うと後ろを向き、玉座の方を見ながら話を始めた。あの日――「父上! 何か大きな魔力をこちらから感じましたが……」バタン――ゾルダは慌てて扉を開けて玉座の間に走り込んだ。(ん? なんかゾルダの口調が違うような……)そこには魔王ゾルダードが苦しんで今にも倒れそうにしていた。 魔力もそこから溢れんばかりに出続けていた。 その魔力は魔王ゾルダードのものとは違うように感じていたゾルダは父の元に駆け寄る。「父上、大丈夫ですか?」「……お……おぬしか…… す……まぬのぅ…… じゃが、ワシから離れるんじゃ……」「何をおっしゃるのですか? だいぶ具合が悪いのではないですか? おい、誰かー、誰かないのかー」ゾルダは周りを見渡すが誰もいない。『どうして誰もいないんだ…… 父上がこれだけ苦しんでいるのに……』苦しむゾルダ―ドを放っておく訳にはいかない
「とりあえず、黙って聞け! あの時、いったい何が起きていたのか。 ことの真相をお前に聞かせてあげるからのぅ」取り押さえたゼドを前にゾルダは先々代魔王、ゾルダやゼドの父の死について語り始めた。「ゼド、お前が勘違いしているところがいくつかあるのじゃ。 その1つとして、この魔族の国の成り立ちについてじゃ。 お前はこの国が何故出来たのか知っておるのか?」「それは……人族を根絶やしにするため…… この大陸を魔族が支配するためだろ!」身体は屈しているものの、顔を上げゾルダを睨んでいるゼドはそう吐き捨てた。「そこからじゃ。 このたわけが」ん? 魔王はこの大陸の支配が目的じゃない? 俺も王からは魔王が攻めてきているからとは聞いているのだが……「そもそもこの国は迫害から逃れるために、初代勇者がその者たちと立ち上げた国じゃ」なんだと? 衝撃の事実…… この国に初代勇者が絡んでいた?「勇者だと?」ゼドも驚愕の事実に絶句する。「そうじゃ。 数千年前のことじゃ。 ワシも父上からこのことを聞いておるし、この国の中枢に代々言い伝えられていることじゃ。 当時、邪悪なるものの存在を倒すべく、勇者召喚が行われたのじゃ。 その勇者がその邪悪なるものも打ち倒した…… そこまではいいかのぅ」「そうだな、その邪悪なるものが余たちの祖先のはず……」明らかにうろたえ始めたゼド。 ヒルダやセバスチャンは顔を変えずにゾルダの話を聞いている。 この二人は真相を知っているのだろう。「そうですわね、マリーもそう聞いておりますわ」マリーはどうやら知らないようだ。 ゼドと同様に落ち着かない様子だった。 その様子をちらっと見るもゾルダはそのまま話を続けた。「まぁ、そこからが問題なのじゃが…… その邪悪なるものが、魔族と定義されてのぅ。 当然
「俺に考えがある。 ゾルダはあまり力入れずに。 攻撃は控えめでいいから」どうやらあやつは何か思いついたのかのぅ。 ゼドがしつこいおかげで、力加減も難しくなってきておる。 ここはあやつの作戦に乗っておこうかのぅ。「しかたないのぅ…… おぬしの作戦とやらを試すかのぅ。 ここから先は足止め程度しか攻撃はせんからのぅ」「それでいいよ。 じゃ、シータ、よろしく」あやつは横にいるシータに何か頼んでいるようじゃが、いったい何をするのかのぅ。「坊ちゃんも人使い荒いですの。 ゾルダ様に……」ワシの方をちらっと見ておるシータ。 おおかた、ワシに似ておるとか言いたのじゃろぅ。「は? 何か言ったかのぅ、シータ」「なんでもございません」しらばっくれるシータはあやつの近くにそそくさといくと、あやつを抱えて近距離の転移をしはじめた。「な……なんでこの恰好?」足を抱えられ、わきの下に手を通し、ひょいと持ち上げられたあやつは、顔を真っ赤にしておる。「まぁ、どんな格好でもいいではないですかの」「なんで、よりによってお姫様抱っこなんだよ!」「文句はあとから聞きますの。 今は、ゼド坊ちゃんの方をなんとかしてほしいの」シータはそう言うと、ゼドの近くにあやつを連れて転移しおった。「……うーん、もう、いいや。 とりあえずやる!」恥ずかしいと思うより、やらねばいけないことを優先したあやつは目の色を変え、魔法を発動しおった。「デトックス」? デトックスとな? そんな魔法、あやつへのダメージにはならんぞ?「おぬし、何を考えておるのじゃ。 そんな解毒魔法で、ゼドをどうする気じゃ?」「まぁ、見ていてよ。 上手くいくかどうかは分からないけど……」あやつはそう言うと、デトックスをゼドの奴に放つと、シータの転移魔法でゼドから離れ、 また、ゼドの死角に転移して、解毒魔法を繰り返しおった。ゼドの奴も鬱陶しいコバエがいたかのように、腕をブンブンと振り回しておるが…… 神出鬼没のシータとあやつを捕らえることが出来ない。 やがて、そっちの方が気になりだしたのか、ワシへの攻撃は止んでいきおった。ゼドの意識があやつに集中し始めたところもあり、ゼドの闇雲さは消え始めていきおった。 出現箇所を考えて、攻撃するようになってきおった。
二人の圧倒的な戦いの前にただただ見ているだけしかできない。 しかもこの二人が姉弟だということ。 それにゾルダはその前の魔王である父を殺している? ここに着いてそれほど時間が経っていないのに情報が多すぎる。 壮大な姉弟ケンカだな、これは……いやいや、そんなことを考えている場合ではない。 ゼドは明らかに暴走しているし、普通じゃない。 それを止めないといけないとは思うけど、俺はどうしたらいいんだろう。剣を構えてはいるものの、足が竦んで動いていない。 なんとかしなきゃいけないとは思うのだが……「アグリ殿、ここは無理せずお二人を見守ってもらえれば」俺の気持ちを察したのか、セバスチャンがすっと横に来て言った。 さっきまで暴れていったゼドから城の者たちを守っていたはずだったが……「いや……でも…… 俺の使命は魔王を倒すことのはずで……」そうは言ったものの、今の二人に割って入る実力がないのは分かっていた。 それでも、この世界に呼ばれた理由は魔王を倒すことである。 ここに俺がいる存在意義なのだ。 でも、ゾルダたちと旅をしてきて、俺の使命は「魔王を殺す」ことじゃなく、「誰も失わずに終わらせる」ことなんじゃないか、と感じ始めていた。 傍若無人なところはあっても、どこか憎めない。 それはマリーやセバスチャン、シータたちにも言えること。「あら、わっちは入らないの? 無視? それはそれで……」ん? 今、俺の心の声を読んだのか? ヒルダが大声で叫びながら悶えている。「いや、あなたはさっき会ったばかりだから、わからなくて……」勝手に読んだんだから律儀に返す必要はないだが、思わず返してしまった。 そのとたん、不機嫌な顔になったヒルダは「もう、真面目に答えなくても。 そこは放置プレイでしょ!」ブツブツ文句をいいながら、二人の戦いの余波を受け続けている。……なら放っておこう。人間と魔族、お互いが平和なら、不戦になるなら、それが一番なのかもとは思う。 ずっとアイツたちと旅をして来て、分かり合えなくはないと感じているからだ。 ゼドともきっと分かり合えるんじゃないかと……「アグリ、ねえさまに任せておけば大丈夫ですわ」マリーも飛んでくる瓦礫をたたき割りながら、俺にそう話しかけてきた。「マリーもありがとう。 分かったよ、ゾル
「本当に嘆かわしいのじゃ。 お前は何も見えておらんのぅ……」そんな姿になってまでワシを倒したいのかのぅ。 父上の件は、ゼドがもう少し成長してから話すつもりでおったのじゃが…… まぁ、でもあの状況を見ておれば、誤解するのも無理はないかのぅ。「なぁ、ゾルダ。 ゼドが言っていたことは本当なのか? 先代の魔王を殺したって……」おぬしか…… あぁ、ここにも説明せねばならん奴がおるのか…… 面倒じゃのぅ。「その話は今のあのバカ弟のことが終わってからじゃ。 今、言えることは、すべてはあいつの勘違いということじゃ!」あやつにそう言うと、ワシは襲い掛かってくるゼドの前に立った。 なりふり構わぬゼドはワシ目掛けて大きな拳を落としてくる。ガッシーン――鉱物がぶつかったような音が部屋に響き渡っておる。 腕を交差して受け止めたのじゃが、なかなかズシリとくるのぅ。「お前も少しはやるようになったのぅ」あんな変な物の力を借りねばワシに立ち向かえぬ心の弱さ…… そういうところもじゃぞ。 まだまだ魔王としての自覚が足りないところばかりじゃ。 それに……「だが、まだまだワシには及ばぬのじゃ」交差した腕で押し返すと、いとも簡単にはじけ飛んでいったのじゃ。 ゼドは柱に激突するとヒビが大きく入り、瓦礫が崩れ落ちたのじゃ。 力も魔王としてもまだまだ足りないのぅ……「オマエガニクイ…… オマエサエ、イナケレバ……」そこまでワシを憎んでおるのか。 それとも薬の影響かのぅ…… お前のその考えも意識も全部誘導されておるということがわかっておらぬようじゃのぅ。ゼドは起き上がると、全身に魔力を流し身体を強化し始めたのじゃ。 力には力か…… その身体になったのなら、悪い考えではないのじゃが……「脳筋か、お前は。 お前はお前の戦い方があるじゃろうに」思わず首を横に振ってしまったのじゃ。 これはもう嘆かわしくて、頭を抱えてしまうのぅ。強化したゼドは思いのほか俊敏に動き、またワシに襲い掛かってきおった。 腕から繰り出される力一杯のパンチや闇雲に振るうキックの嵐。「だ……大丈夫か、ゾルダー!」あやつは剣をしっかり構えて、ゼドの隙を窺おうとしておる。 その心意気は嬉しい限りじゃが、今のあやつの実力じゃ、死ぬだけじゃ。「おぬし、ワシは大







